オステオパシーでは、骨格、筋膜、内臓など、人体のあらゆる構成要素に留意し、
人の身体をホリスティックに、全人的に捉えて施術を致します。
同じ腰痛という訴えだとしても、
実際には、特定の筋肉に関連して痛みが起きている人もおれば、
重力に対する適応において重要な骨格に問題が起きている人もおれば、
場合により、
内臓の機能低下や病変により、
FASCIA(膜)の張力も関与して腰痛を感じていることも少なくないと私は考えます。
慢性的な腰痛を感じている方に、
腸を束ねている腸間膜根の強い緊張が関与していることはよくあることですが、
腎臓が弱っていたりする時も腰痛が起きることがあり、
意外と内臓由来の腰痛というのは珍しいことではございません。
もちろんそれは、西洋医学的な検査をして異常と認識されるようなものでなくても、
腰痛と内臓の状態というのは関連があるということです。
長年、多くの腰痛や下肢のしびれ症状がある方などを施術してきてますが、
自信をもって言えることとして、
激しいスポーツなどもしておらず、
普通に生活していただけなのに腰椎椎間板ヘルニアになったという方の多くは、
内臓の緊張も関わって症状を引き起こしていることが多いと当院の施術者は考えています。
腰椎椎間板ヘルニアの頻発部位である腰椎4番と5番の椎間は、
そうした内臓の癒着や強固な緊張の被害者として、
痛みやしびれを起こしやすい代表的なところだと言えます。
(以後、腰椎をL、仙椎をSと表記します。)
少々専門的な話を致しますと、
横隔膜の脚が付着するL2、L3は、
同時にインナーマッスルである大腰筋の付着も受けています。
また、ヘルニアが頻発するL4-L5の椎間板の上のL4は、
大腰筋の付着を受けています。
【横隔膜脚と大腰筋の付着 ネッター解剖学アトラスより抜粋】
腰椎ヘルニアの頻発部位であるL4~L5の椎間板は、
強固な上下からの支持を受けている構造(L2~L3及び4)の下にあり、
重力的な負荷もかかりやすい構造と言えます。
また、腸間膜の緊張の影響が強固なのも、L2~4あたりと言えます。
当然、人それぞれ個性があるので、一人一人、解剖学という点でも違いがあると思いますが。
【腸間膜根と脊椎の位置関係 プロメテウス解剖学より抜粋】
なぜ、腰椎4~5番の椎間板がこんなにも腰椎椎間板ヘルニアの頻発部位になるのかと考えれば、
胸郭の陰圧や呼吸に対して重要な働きをしている横隔膜の脚、
重力下での直立歩行に大切な働きをしている大腰筋、
食生活などが悪いと過緊張する腸間膜という、
3つの重要な要素が全てL2~3に関わっており、
L4の下のL4~L5の椎間はそうした内側からの支持がL2~3ほどはなく、
構造上、被害者的にヘルニアを起こしやすくなってしまうということが言えます。
横隔膜と大腰筋と腸間膜や内臓。
こうした要素が、L4~L5に腰椎椎間板ヘルニアを頻発させる原因のカギになっていると私は思います。
もちろん、人は全身で生きてますから、一概にそこだけが問題と言っているわけではないのですが、
腰椎椎間板ヘルニアを起こす部位自体は、構造的宿命を帯びた被害者であり、
そこ自体は原因ではなく結果として悪くなった部位なのです。
オステオパシーを実践する立場からすると、
なぜ、ヘルニアを起こしたのかという原因が何も解決されないまま、
飛び出した髄核ヘルニアを手術で切除するというのは、
後に新たな問題を生むことがあるのも頷けます。
オステオパシーを研鑽する立場である私からすると、
手術をする前に、解消すべき体のトータルとしての問題が、
腰椎椎間板ヘルニアには多々、ある様に思います。
実際に、医師に手術を勧められた方でも、
オステオパシー施術により腰椎椎間板ヘルニアの痺れ症状が解消した方もおられます。
もちろん、手術が最適のケースもあるでしょうし、
オステオパシーで全て改善できると言っている訳でもありません。
ただ、私が対峙した方にも、
手術後に芳しい結果が得られなかった方もおられるので、
手術前に、より自然な方法を試すのは有意義だと思います。
また、医師の中にも、特例的な事例以外はあまり手術を進めない方も増えていると聞きます。
その理由の1つは、
飛び出した髄核をマクロファージ(大食細胞)が掃除をして、
ヘルニアそのものが自然治癒するという事例が医学上のリサーチでもあり得るという事が分かってきており、一度飛び出した髄核が、自然治癒する可能性もあるという認識が拡がったための様です。
これは仮説ですが、私が今まで対峙してきた腰椎椎間板ヘルニアを患う方で、
施術後に痺れが完全になくなったというケースが複数あるのですが、
内臓の緊張の緩和や椎間にかかる重力的な圧が減圧されることで、
ヘルニアによる問題が自然な力で解消するだけのきっかけを作れた場合、
症状の改善が見られると推測されます。
もちろん、ヘルニアの状態を画像検査するのは医療機関ですし、
今ではマクロファージを活性化させる投薬もできつつあり、
医療機関においても腰椎椎間板ヘルニアに対するアプローチの選択の幅が広がっている様です。
より自然なアプローチとして、
腰椎椎間板ヘルニアによる症状の改善に、オステオパシーがお役に立てることがございます。