この記事では、ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症スペクトラムなどの発達障害と診断された小児に対するオステオパシー施術について解説しています。
健和トータルケアでは、日常的に発達障害と診断されたお子様を施術させて頂いておりますが、複数の親御様から「頭蓋仙骨療法が、発達のために子供に良いと聞いて。」ということを聞き及び、元々、頭蓋仙骨療法はオステオパシーの一部なのですが、そうした認識も社会的にあまり知られていないのだなと思ったことも、この記事を書くきっかけになっています。実際には、頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラルセラピー)というのはまさに、オステオパシーの一部を切り取ったものなのです。このことについては、『クラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨療法)について。』という別の記事で歴史的な詳細を書いています。
以下では、発達障害の原因分析と、オステオパシーでは実際にどういうことをしているのか?また、臨床の現場で、どういう変化が得られているのかなどを解説しています。
1)発達障害の原因分析。そもそもなぜ、発達障害と診断されるお子様が増えたのでしょうか?
これは多くの議論がなされており、代表的な説を以下に列記致します。
①農薬、PCB、抗うつ薬などの化学物質により、妊娠初期の段階で、胎児の脳に影響を与えた。(脳科学領域では、『発達障害の原因と発症メカニズム/黒田洋一郎著』などで言及されています。)
②母親、父親共に、高齢で受胎する事が増加したことも要因の一つである。(①と同じく、『発達障害の原因と発症メカニズム/黒田洋一郎著』などでも言及されています。)
③リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)が関わっている。腸は、神経伝達物質であるセロトニンの90%以上を作り、情緒とも深く関係する。【脳腸相関】(『全ての不調をなくしたければ除菌をやめなさい』ジョシュ・アックス著などでも言及されています。また、オステオパシーにおいても脳と腸の関連性は注目されています。)
④『精神疾患の分類と診断の手引き』(DSM)などの発達障害と診断するためのガイドラインの改定が成される度に、診断基準が広がり、それに伴ってそう診断される小児が増加した。(これは複数の医師や著作でも言及されています。)
⑤吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開、無痛法・麻酔法などの出生にまつわる医療的介入の際に、脳や発達に影響を受けている。(これは、オステオパシーでは一般的に言われている事ですが、トマス・バーニー氏というアメリカの精神科医も出生に関する事と小児の情緒や発達の因果関係に言及しています。代表的な著作には、『胎児は見ている』『胎児は知っている母親の心』などがあります。)
しかし、未だ、確定的な事は言えない医学的状況で、「これが原因である」と一つの原因に希釈できず、実際は複合的な原因が関わっていると推測されます。
オステオパシーでは、一人一人のお子様を、一人の生命として考えているため、医療機関で『自閉症スペクトラム』『ADHD』と診断されたお子様と対峙していても、それぞれ全然違うという事を、臨床の中で深く感じます。いっしょくたに同じ診断にして良いものかと個人的には思っていますが、オステオパシーが役に立てるケースが少なからずございます。
確実に言えることは、上記の⑤の出生トラウマが、小児の発達に物理的・化学的・心理的な影響を与えているという事が明らかなケースがありますが、そうした場合は、脳に対する圧力を手によって下げることは可能です。また、③のリーキーガットが関わっていると疑われる場合も多いのですが、そうした場合はオステオパシーにおける内臓の施術で腸に働きかけることも多く、同時に食生活の改善などを促して良い結果が得られることもございます。
オステオパシーではあくまで、全身を視野に常に施術をしていますが、それに関する説明は少々専門的になりすぎるため、オステオパシーの発達に関わる小児に対してどういう事をしているかという代表的な例を、以下に書いています。
2)オステオパシーの小児施術でしていること。その1。~硬膜の緊張を緩解している。~
解りやすい例では、吸引分娩、鉗子分娩、長時間に及ぶ難産などで生まれたケースでは、小児の多くは頭蓋自体が非常に硬く、硬膜という頭の中で脳を包み、仙骨という骨盤の中心までつながっていて脊髄を覆っている膜の顕著な緊張が見られ、そうした硬膜の緊張が脳に対しても影響を与えていることが、オステオパシーの研究では解っていますし、私の臨床でも確証が得られている事です。
硬膜が脳を覆っている様子。【ネッター解剖学より抜粋。】
硬膜は、硬い膜という漢字の通り、死体解剖などをしてみても非常に硬さがある膜で、これが一度、出生トラウマや自動車事故などの外的な負荷が掛かると、異常な緊張が形成されたまま過ごしているということが、小児でも成人でも起こりえます。それが、脳の発達にも影響を与えている事があるということは、多くのオステオパスが言及している事です。
赤ちゃんの頭蓋というのは膜性で、縫合(骨同士の継ぎ目)がまだ閉じ切っておらず、頭蓋も非常に柔らかいのです。また、成人ほど骨化、つまり硬い骨になっていません。
↑上の図が成人の頭蓋、下の図が新生児の頭蓋。【ネッター解剖学より抜粋】赤ちゃんの場合、頭蓋はまだ膜の要素が強く、それだけ物理的な圧力などにも影響をされやすい。
そこで、こうした硬膜の緊張を緩解することや、頭蓋と脳の間を満たしている脳脊髄液の流れを改善すること、または頭蓋にかかった外力を低減すること、脳自体にも手によって働きかけることで、小児の脳の緊張を緩和し、実際に情緒や行動に喜ばしい変化が現れることがあります。
3)オステオパシーの小児施術でしていること。その2。~第一次呼吸の正常化~
また、硬膜などの物理的な緊張を緩解することの他に、オステオパシーで言う第一次呼吸を正常化することも考えます。
「第一次呼吸って何?」と思われる方が多いと思いますが、簡単に言えば、第一次呼吸とは、お母さんの子宮から、外界に出て、赤ちゃんが産声を挙げる最初の呼吸によって始まる肺呼吸以前から始まっている呼吸の事を指しています。
肺呼吸をしていないのに、受胎した受精卵は、次々と卵割をしていき、最終的には人間の身体になりますが、その間、まるで魚類の様な姿を取ることもあります。発生学者の中には、「あたかも、人間まで進化する生物としての歴史を胎児の間に一通り経験している様だ」と述べている方もおられます。
実際は、受胎した時から、お母さんの身体の中で、胎児のある種の肺呼吸以前の原初的な『呼吸』が始まり、人間の身体を形成する一連の生命リズムが始まっていると言えます。一説ではこれは魚の鰓呼吸の名残では無いかとも言われています。肺呼吸の呼吸を止めても、第一次呼吸が止まる事はありません。また、こうした呼吸は生まれてから死ぬまで、ずっと続いていくのです。ある種、人を人として成立させるためのバイオダイナミクス(生体動力学)がここには働いていると言えます。
第一次呼吸として頭蓋を例に取ると、頭蓋も膨らんだり、縮んだりという、一連の『呼吸』の様な自律的動きをしています。また、実は、脳もそうなのです。熟練したオステオパスはそれを手によって感知する事が出来ます。
頭蓋は、第一次呼吸によって膨らんだり、縮んだりしている。(膨張と収縮)【ウィズダム・イン・ザ・ボディより抜粋】
こうした第一次呼吸については、1970~80年代にDr.アプレジャーらのミシガン州立大学における研究によって実際に頭蓋骨が一定のリズムを持って動いていることが科学的にも証明されています。
こうした第一次呼吸がうまく働かない理由のひとつにも、出生トラウマや子宮内にいた時に受けた外的圧力(子宮内圧)が深く関係している事がございます。また、成人でも強い事故などで瞬間的に頭を打ったり、硬膜が引き延ばされたりすれば、第一次呼吸に問題を起こします。
オステオパシーでは、こうした第一次呼吸を正常化する事で、肺呼吸以前から始まっている生命活動、英語で言えばバイタリティー(vitality)そのものを改善する様に働きかけて、小児のその後の発達に良い影響が出る様に施術致します。
私たちは、肺呼吸そのものは1日に2万1600回、呼吸しているのです。(『超呼吸法』根来秀行著より抜粋)それだけ日々繰り返している肺呼吸の基礎には、より原初的な第一次呼吸が関与しているという事は、オステオパシーの観点からは確信しています。
例えば、第一次呼吸に問題がある小児ですと、肺呼吸自体も弱かったりしますので、姿勢をうまく保てないとか、自然と猫背になるという事が多々あります。
オステオパシーでは、呼吸そのものを改善させるために横隔膜に働きかけるという事も日常的にあるのですが、それと同時に、第一次呼吸の改善を図ることで、より原初的なバイタリティーを目覚めさせるということがございます。
4)発達に関わる小児の臨床における親御様から頂く感想
実際に、発達障害(ADHD、自閉症スペクトラム、LDなど)と診断されたお子様にオステオパシー施術を行ってみて、親御さんから頂く感想の代表的なものを以下に記載します。
~情緒的・知的変化の例~
◎以前は落ち着きが無くて、一つの事に集中できなかったが、集中できるようになった。
◎癇癪をすぐ起こしていたのに、施術を受け始めてからあまり起こさなくなった。
◎保育園の先生から、「以前より周囲の友人と仲良く遊ぶようになり、協調性が増した様に見えるけど、最近何か変わったことはありませんでしたか?」と指摘された。
◎以前は発語が少なかったが、施術を受けてからボキャブラリーも発語も増えた。
◎表情や感情表現が以前より豊かになった。
◎知能指数のテストで施術を受け始めてスコアが上がった。
などです。それと同時によくあるのが、身体的な症状の軽減も伴っている事が多いです。
~身体的変化の例~
◎アレルギー症状が軽減した。
◎便秘症状が軽減した。
◎夜尿が減った。
◎てんかん発作を起こさなくなった。
◎目の奥の痛みなどの痛み症状が無くなった。
◎猫背気味だったのが、姿勢をうまく保てるようになった。
健和トータルケアの施術者は、以上に書いた情緒的・知的変化と、身体的変化は別々のものではなく、互いに関わり合っている兆候だと感じています。
オステオパシー施術後のこうした変化は、勿論、その子自身の発達自体が関係しているのは当然ですが、オステオパシー施術を受けてからそういう変化が加速したというご感想を頂く事が多々ございます。また、オステオパシーは解剖学や生理学などの基礎医学に深く立脚し、元々、医師が創始した手による自然医学ですので、説明しようとすればいくらでも医学的な詳細な説明もできますが、あまり深く書きすぎると「難しすぎる」と感じられるかもしれませんので、なるべく簡単に説明しているつもりです。
5)小児科オステオパシー、及び頭蓋仙骨療法の可能性
健和トータルケアの施術者は、小児科オステオパシーを実践する上で、カナダ・ドイツ・スイスなどの計9校のオステオパシー・カレッジの理事長を務める、フィリップ・ドゥリュエルD.O.という方に一番深い影響を受けています。ドゥリュエル先生が以前、小児科オステオパシーの講義中に脳性麻痺の女の子をデモで施術している所を見て、その女の子は言葉を聴いて、理解することは出来るが、言葉を話すことがあまりできなかったのですが、ドゥリュエル先生が施術した後、次の日には言葉を話し始めて、周囲のご親族がびっくりしたという事がありました。
私はそのデモを見た時に深く感動して、「私もドゥリュエル先生に少しでも近づきたい」と想い、ドゥリュエル先生の講義を国内外で受け続け、小児科オステオパシーの実践と研鑽を続けているのです。
オステオパシーにおいて、小児科の伝説的権威としてはアメリカのヴィオラ・フライマン医師・D.O.(ドクター・オブ・オステオパシー)が挙げられますが、フライマン先生はフィリップ・ドリュエルD.O.の先生でもあります。フライマン先生は、アメリカのサンディエゴで、the Osteopathic Center for Children(オステオパシックセンター・フォー・チルドレン)という、小児専門のオステオパシー院を運営されていた方で、今現在はフライマン先生は他界されておりますが、90代まで生き、小児科オステオパシーに多大なる功績を残した医師であり、偉大なオステオパスでした。多くの伝説的な臨床結果を残した方ですが、中には、一般的な西洋医学の医師からは、「この子は絶対に普通学級に通う事はできません。」と言われたダウン症のお子様をフライマン先生が3歳ぐらいから治療して、その子は普通学級に通え、20代になった時には、俳優として活躍する様にまでなったというエピソードなどもございます。
【写真は、フライマン先生が90代で他界された直後の、ドゥリュエル先生の講義の画像。】
小児科オステオパシーの可能性は非常に深く、健和トータルケアの施術者はフライマン先生やドゥリュエル先生などの世界でも屈指の小児科のエキスパートに深く感銘を受け、日々、実践しています。
6)発達に関するオステオパシー施術は、早期であればあるほど変化が起きやすい
『自閉症の脳を読み解く』(テンプル・グランディン著)でも書かれていますが、グランディン氏は当人が自閉症という診断を受けている方ですが、実際に脳の内、片側の側脳室が顕著に長いという特徴があり、脳そのものも非常に特徴的だったと自著で述べておりますが、誰しも多かれ少なかれ脳はそれぞれ違います。
脳の発達の順序として、ごく小さい時(胎児から赤ちゃんの時)に急激に脳のシナプス(神経細胞間の接合部)が形成され、それを後に刈り込んで、シンプルにして発達していくということが脳科学でも解ってきています。発達障害においては、脳のシナプス過剰という説もございます。聴覚過敏(音に非常に敏感)であるとか、視覚過敏(光などに敏感)というケースも多く、シナプスの刈り込みがうまくいっていないという事も指摘されています。
しかし、この脳のシナプスの刈り込みは出生後10年以上続くと言われており、また、脳には可塑性(様々な刺激に対して常に機能的、構造的な変化を起こすという性質)があるので、オステオパシー施術によっても、そうした刈り込みを支援することができるものと思われます。
施術を受けるタイミングとしては、早ければ早いほど、変化を起こしやすいという事は言えます。オステオパシーでは、新生児に対して施術を行う事もございますが、それはそうした「早期施術」の利点をオステオパシーでは深く理解しているからだと言えます。
また、時折、お子様がちゃんと施術を受けてくれるか心配なさるお母様がおられますが、確かに最初は施術を受けるのを嫌がる子もおられますが、そうした子が後に自分で施術を受けたがる様になる事もございます。
オステオパシー及び頭蓋仙骨療法は、発達支援という意味で有意義な一つの選択であると言えますし、健和トータルケアの施術者は特に発達支援に力を入れています。
オステオパシーでは、骨格、筋膜、内臓など、人体のあらゆる構成要素に留意し、
人の身体をホリスティックに、全人的に捉えて施術を致します。
同じ腰痛という訴えだとしても、
実際には、特定の筋肉に関連して痛みが起きている人もおれば、
重力に対する適応において重要な骨格に問題が起きている人もおれば、
場合により、
内臓の機能低下や病変により、
FASCIA(膜)の張力も関与して腰痛を感じていることも少なくないと私は考えます。
慢性的な腰痛を感じている方に、
腸を束ねている腸間膜根の強い緊張が関与していることはよくあることですが、
腎臓が弱っていたりする時も腰痛が起きることがあり、
意外と内臓由来の腰痛というのは珍しいことではございません。
もちろんそれは、西洋医学的な検査をして異常と認識されるようなものでなくても、
腰痛と内臓の状態というのは関連があるということです。
長年、多くの腰痛や下肢のしびれ症状がある方などを施術してきてますが、
自信をもって言えることとして、
激しいスポーツなどもしておらず、
普通に生活していただけなのに腰椎椎間板ヘルニアになったという方の多くは、
内臓の緊張も関わって症状を引き起こしていることが多いと当院の施術者は考えています。
腰椎椎間板ヘルニアの頻発部位である腰椎4番と5番の椎間は、
そうした内臓の癒着や強固な緊張の被害者として、
痛みやしびれを起こしやすい代表的なところだと言えます。
(以後、腰椎をL、仙椎をSと表記します。)
少々専門的な話を致しますと、
横隔膜の脚が付着するL2、L3は、
同時にインナーマッスルである大腰筋の付着も受けています。
また、ヘルニアが頻発するL4-L5の椎間板の上のL4は、
大腰筋の付着を受けています。
【横隔膜脚と大腰筋の付着 ネッター解剖学アトラスより抜粋】
腰椎ヘルニアの頻発部位であるL4~L5の椎間板は、
強固な上下からの支持を受けている構造(L2~L3及び4)の下にあり、
重力的な負荷もかかりやすい構造と言えます。
また、腸間膜の緊張の影響が強固なのも、L2~4あたりと言えます。
当然、人それぞれ個性があるので、一人一人、解剖学という点でも違いがあると思いますが。
【腸間膜根と脊椎の位置関係 プロメテウス解剖学より抜粋】
なぜ、腰椎4~5番の椎間板がこんなにも腰椎椎間板ヘルニアの頻発部位になるのかと考えれば、
胸郭の陰圧や呼吸に対して重要な働きをしている横隔膜の脚、
重力下での直立歩行に大切な働きをしている大腰筋、
食生活などが悪いと過緊張する腸間膜という、
3つの重要な要素が全てL2~3に関わっており、
L4の下のL4~L5の椎間はそうした内側からの支持がL2~3ほどはなく、
構造上、被害者的にヘルニアを起こしやすくなってしまうということが言えます。
横隔膜と大腰筋と腸間膜や内臓。
こうした要素が、L4~L5に腰椎椎間板ヘルニアを頻発させる原因のカギになっていると私は思います。
もちろん、人は全身で生きてますから、一概にそこだけが問題と言っているわけではないのですが、
腰椎椎間板ヘルニアを起こす部位自体は、構造的宿命を帯びた被害者であり、
そこ自体は原因ではなく結果として悪くなった部位なのです。
オステオパシーを実践する立場からすると、
なぜ、ヘルニアを起こしたのかという原因が何も解決されないまま、
飛び出した髄核ヘルニアを手術で切除するというのは、
後に新たな問題を生むことがあるのも頷けます。
オステオパシーを研鑽する立場である私からすると、
手術をする前に、解消すべき体のトータルとしての問題が、
腰椎椎間板ヘルニアには多々、ある様に思います。
実際に、医師に手術を勧められた方でも、
オステオパシー施術により腰椎椎間板ヘルニアの痺れ症状が解消した方もおられます。
もちろん、手術が最適のケースもあるでしょうし、
オステオパシーで全て改善できると言っている訳でもありません。
ただ、私が対峙した方にも、
手術後に芳しい結果が得られなかった方もおられるので、
手術前に、より自然な方法を試すのは有意義だと思います。
また、医師の中にも、特例的な事例以外はあまり手術を進めない方も増えていると聞きます。
その理由の1つは、
飛び出した髄核をマクロファージ(大食細胞)が掃除をして、
ヘルニアそのものが自然治癒するという事例が医学上のリサーチでもあり得るという事が分かってきており、一度飛び出した髄核が、自然治癒する可能性もあるという認識が拡がったための様です。
これは仮説ですが、私が今まで対峙してきた腰椎椎間板ヘルニアを患う方で、
施術後に痺れが完全になくなったというケースが複数あるのですが、
内臓の緊張の緩和や椎間にかかる重力的な圧が減圧されることで、
ヘルニアによる問題が自然な力で解消するだけのきっかけを作れた場合、
症状の改善が見られると推測されます。
もちろん、ヘルニアの状態を画像検査するのは医療機関ですし、
今ではマクロファージを活性化させる投薬もできつつあり、
医療機関においても腰椎椎間板ヘルニアに対するアプローチの選択の幅が広がっている様です。
より自然なアプローチとして、
腰椎椎間板ヘルニアによる症状の改善に、オステオパシーがお役に立てることがございます。
あまり知られていないこととして、過去における脳震盪などの脳に対する強い衝撃や外傷が、認知症などの認知障害、うつ(鬱)などの精神障害、または広義での『情緒』と関係している可能性が高いことが、昨今の脳科学の研究やオステオパシーにおける研究においても明らかにされつつあります。
健和トータルケアの施術者が、カナダのモントリオールにおけるオステオパシーシンポジウムにて受けた講義も脳震盪などの脳に対する外力に関することと脳の治療についてでしたが、まさに、私自身、日頃の臨床において深い関心を抱いていたテーマです。
特に脳震盪などと認知障害、精神障害、または広義の『情緒』との関係性が明るみになった例として、アメリカのアメリカンフットボールのリーグであるNFLを引退した選手に対して行った大々的な追跡調査が一役買ったと言えます。
その調査によると、NFLの選手の引退後、アルツハイマー、認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、パーキンソン病などの発症率が、一般的な発症率の割合の約2倍だったということが明らかになったのです。前記した疾患のほとんどは、医学上、未だ発症の原因が未解明であり、頻繁に脳震盪などの脳に対する外傷を負った人に発症するケースが多いということは、非常にセンセーショナルな調査結果だと言えます。また、鬱症状を呈するケースや自殺に関しても、発症率・発生率が顕著に高いということが分かっています。
こうした外力による脳の損傷のことを、アメリカなどではTBI【Traumatic brain injury:外傷性脳損傷】と呼んでおり、そうした脳が受けた外傷の影響が慢性化した状態のことをCTE【Chronic traumatic encephalopathy:慢性外傷性脳症】と呼んでいます。
当院に来院される方の中にも、昔、アメフトの選手だったという方で、鬱傾向や慢性的な頭痛や疲労感を訴える方がおられますし、頭を強打した様な非常に激しい交通事故を経験してから、慢性的な頭痛・全身倦怠感・抑うつ症状を訴える方もいらっしゃいますが、アメフトの様な特定の激しいスポーツをしていないくても、非常に強い頭蓋や脳に対する外傷を負った経験がある方に、程度の差はあれ、同じ様な傾向がある様に思います。そして、オステオパシーによって頭蓋や脳に対する施術をしていくと、長年、慢性的な倦怠感や鬱傾向に悩んでいた方が、頭痛などの症状の軽減と共に『情緒』にも変化が見られたという感想を頂くことが実際にございます。
昨今の脳における研究でも分かってきたことで、鬱症状を呈する方の内、何割かの方には『脳の炎症』が関係している可能性が高いのです。(厳密に言えば、『鬱病』と『抑うつ状態』とは医学的に区別されていますが、ここではそうしたことはあまり大きな問題にしていません。)
重要なこととして、脳に対するアプローチにおいて世界的権威であるオステオパス、フィリップ・ドゥリュエルDOも明言していましたが、そうした脳に対する外傷の影響は、必ずしも外傷後すぐに現れるわけではなく、時間が経ってからじわじわと影響が出てくることもあり、場合により、数年、数十年経ってから、具体的な症状や障害を引き起こすことが充分ありうると考えられます。
私の臨床において非常に印象深い事例として、大きな地震を経験した際に家具の上にあったものが頭に強打して、床に倒れ込んで気を失っていたという方がおられます。(具体的な震災名などは個人を特定する情報となりますので、ここでは差し引かえています。)その後、その方は慢性的な頭痛、めまい、様々な情緒的不安を感じ、日が経つごとにひどくなっていくので、病院にて画像検査をしても明らかな異常が認められず、結局、医師は『うつ病』という診断を下し、しばらく、抗うつ薬を飲んでいたという時期があるそうです。しかし、状況があまり好転しないため、後に御自分の意思で投薬を中止したという経緯をお聞きしました。
その方の頭蓋や脳を手によってオステオパシー検査で触診してみると、異常な頭蓋や脳のスパズム(慢性的な緊張もしくは不活性)が見つかり、明らかにその頭蓋や脳の緊張自体は、外傷が関与している可能性が高いということが分かりました。ただ、オステオパスが手によって蝕知する異常というのは、必ずしも画像検査で異常として認められるわけではないので、そうした方が一般的な病院を受診すると、主に画像検査によって脳の異常や客観的な構造的異常が検知されないため、結果として精神科や心療内科を受診することになり、場合により『自律神経失調症』、もしくは鬱病などの『精神障害』という診断を下されるケースがあり、もし眠れなければ睡眠導入剤、鬱傾向が強ければ抗うつ薬などが処方されるケースがありますが、実際には、『鬱』と診断された方の内の何割かは、以前の物理的な脳に対するダメージが関与している可能性が否めません。昨今、機能的MRIやPETなど、より精密な脳の検査が可能となってきているので、もしこの方が今現在の最先端の脳の検査をしていたならば何らかの具体的な『脳の外傷』に関する異常が医療の現場で発見されていた可能性もあるかもしれません。ただ、基本的には脳震盪は画像診断で認められるほどの器質的異常が見受けられないことがほとんどで、それでもその後に様々な症状を引き起こすきっかけとなり得るものであると言えます。
念のため申し上げておきますが、鬱病と診断された方、または実際に鬱症状で悩む方全てが、『脳に対する外傷』や『脳の炎症』が関係していると言っているわけではございません。人の情緒というのは非常に繊細なものだと思うので、人間関係や家族関係、人生そのものに対峙するなかで、困窮して精神を病んでいる方が多々おられると思います。ただ、同じ様に鬱症状を呈している方においても、実際は発症機序が個々人で全然違うかもしれず、人によっては過去における物理的な脳の損傷が今現在の症状と関連している可能性があるということは、考慮されるべき点だと思います。
また、過去に頭蓋や脳に対して強い外力を経験した後に、全身倦怠感・頭痛・めまい・うつ的症状を感じ続けているという方は特に、オステオパシーがお力になれるかもしれません。
~~~~~参考ホームページ~~~~~
NFL JAPAN.COMにおける 『NFLに大きな衝撃!元選手の脳障害発症率は一般人の2倍』という記事: http://www.nfljapan.com/column/59617.html
NFLにおける脳損傷の研究に関する記事:http://www.afpbb.com/articles/-/3083666
自殺をしたNFLの選手の記事:http://www.afpbb.com/articles/-/2875837?pid=8888981
NFLがアメフトとCTEとの関与を認めたことに関する記事:http://www.afpbb.com/articles/-/3080411
ナショナルジオグラフィックのCTEに関する記事:http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7523/?ST=m_news
鬱と脳の炎症の関係性について書かれた記事:https://welq.jp/8312
【日本語では詳しい記事があまりありませんが、英語のサイトですとより詳しい記事を載せているところもあります。
何分、最先端の科学的研究で分かってきたことで、まだまだ未解明なところが多い分野であり、今後、より深く解明されていくと思われるテーマだと思います。】
この記事では、オステオパシーにおけるクラニオセイクラルセラピー、頭蓋仙骨系のコンセプトについて解説させて頂きたいと思います。
時折、『そちらでは頭蓋仙骨療法は行っていますか?』という問合せを頂くことがございますが、
『頭蓋仙骨療法』というのは、元々オステオパシーの一部です。
実際は、数あるオステオパシーの人体に対するコンセプトのひとつに『頭蓋仙骨療法』があるのであって、むしろ『頭蓋仙骨療法』だけを行う『セラピー』自体が元々のオステオパシーのコンセプトから外れてしまったものなのです。
それには理由があり、一部のオステオパスが基礎医学的知識がない人向けに頭蓋仙骨系のコンセプトだけを教えていたことがあり、そこから派生して『頭蓋仙骨療法』として独り歩きしてしまったのですが、オステオパシーは全身のつながりを視野に入れたホリスティック医学ですので、当然、頭蓋仙骨系だけを施術の対象とすることはあり得ません。
話を頭蓋仙骨療法(クラニオ・セイクラル・セラピー/クラニオ・セイクラル・バイオダイナミクス及びメカニクス)の解説に移しますが、オステオパシーにおいて頭蓋領域のアプローチを飛躍的に発展させたのは、ウィリアム・ガーナ―・サザーランドというD.O.(オステオパス)であり、1939年に『The Cranial Bowl』という著作を出版し、頭蓋骨調整法の基礎概念を世に出しました。
ウィリアム・ガーナー・サザーランド(William G. Sutherland)DO
サザーランド博士は、解体された頭蓋骨の縫合を観察して、側頭骨と魚のえらとの類似性に着目し、頭蓋骨と呼吸が関係しているのではないかという仮説を立てました。サザーランド博士は自分自身や家族への実験や調査を繰り返し、癒合して固まっている頭蓋骨には呼吸に似た僅かな動きがあること、頭蓋骨の呼吸の様な動きは体液と関連が有ることを仮説として打ちたて、それに基づいて臨床を重ねました。
その後、サザーランドの弟子であるロリン・ベッカーD.O. らによって更に研究が重ねられ、70~80年代にはDrアプレジャーらのミシガン州立大学における研究によって実際に頭蓋骨が一定のリズムを持って動いていることが証明されたのです。一般的な解剖学では、頭蓋の縫合は不動関節(動かない関節)とされておりますが、実際には微細な動きがあることが明らかとなったのです。
そうした頭蓋仙骨系に関して、非常に重要な要素として以下の2点が挙げられます。
➀頭蓋と仙骨を繋ぐ硬膜系を中心として、頭蓋や全身は原初的な自律的リズムで動いている。(肺呼吸とは別の、受胎から続く原初的呼吸をしている。)【第一次呼吸メカニズム】
➁第一次呼吸メカニズムには、脳脊髄液が深く関わっている。
他にも重要な点がありますが、いっぺんに解説すると長くなってしまうので今日はこの2点に的を絞ります。
➀の頭蓋仙骨系のつながりについてですが、これには以下の概念図が理解の役に立ちます。
【プロメテウス解剖学アトラスより抜粋】
赤線が少々雑で申し訳ございませんが、この図の赤色の部分が、頭蓋と仙骨の硬膜系の繋がりを示しています。細かく言えば、小脳テントや小脳鎌、及び尾骨の終糸など、細部のお話もできますが、それをすると専門的になり過ぎるので、頭蓋と仙骨・尾骨などは一連の膜で繋がれているということを示すための簡略的な図だと認識してください。この様に、頭蓋内で脳を包む硬膜という膜は、背骨の中で脊髄(神経)を包み、そのまま仙骨という骨盤の中心及び尾骨までつながっているのです。また、硬膜という漢字が示す通り非常に強靭な膜であり、その強靭さが頭蓋から仙骨までの連動性を生み出しているとも言えます。
こうした頭蓋仙骨系の連動性というのは、物理的な強い外傷を受けた際などにも互いに連動していますし、オステオパシーで第一次呼吸メカニズムと呼んでいる頭蓋仙骨を中心とした自律的な動きの際にも互いに連動しています。
こうした頭蓋仙骨の繋がりを示す分かりやすい例では、スノーボードなどでしりもちをついた後に急激な頭痛やめまいを経験するという症例が挙げられますが、そうしたケースでは仙骨や尾骨に負った外力が硬膜を通じて頭蓋に影響を及ぼしたと言えます。これは私が勝手に言っていることではなく、臨床上そうしたことは多々ございますし、オステオパシーにおいては半ば常識になっている現象です。
オステオパシーでは全身のつながりをあくまで重視して施術に当たりますので、例えばそれが『頭痛』という主訴だったとしても、必ず骨盤を含めた全身を視野に施術を致しますが、それはこうした膜を通じた全身のつながりを深く理解しているからなのです。場合により、主訴が頭痛だからと言って頭蓋だけを調整したとしても、仙骨骨盤側の不整合があるままだと、頭蓋仙骨系の繋がりや一次呼吸メカニズムが関与して、症状の根本的な改善が望めないことが多々ございます。
また、頭蓋仙骨療法について理解するのに、もう一つの重要な要素が、脳脊髄液です。
【ネッター解剖学カラーアトラスより抜粋】
脳脊髄液とは、脳や脊髄を覆う液体なのですが、脳脊髄液の循環は脳や人体の神経ネットワークが円滑に働くために非常に重要な働きをしており、また、脳脊髄液は一次呼吸メカニズムの一連のリズムにも関与しています。学術的には硬膜の内側である、クモ膜下腔を流れ、脳や脊髄を保護している様な液体です。
オステオパシーの創始者であるA.T.スティルも脳脊髄液の重要性について格別の注意を払っていました。スティル先生は脳脊髄液についてこの様に述べています。
『脳脊髄液は人体に含まれる最もよく知られた要素であり、
脳が豊富にこの液体を供給しないと、身体は障害された状態のままだろう。
判断のできる人は、この大いなる命の川から水を引き、
すぐに枯れた原野を潤さなければならず、さもないと、
健康の収穫が永遠に失われることがわかるだろう。』
脳脊髄液の流れの改善というのはオステオパシーの施術において非常に重要視することで、それは第四脳室、第三脳室、側脳室などの脳室に働きかけることで脳脊髄液の産生と循環を促し、中枢神経、つまり脳と脊髄が円滑に仕事を全うすることを助けるという側面がございます。
健和トータルケアの臨床においても、脳脊髄液減少症と診断された方の頭痛やめまい、長年に渡る全身の倦怠感などの改善に成功した事例がございますが、そうした難病の診断を下されていない人でも、慢性的な頭痛、肩こり、全身の倦怠感、事故後から起きた不定愁訴などを訴える方に脳脊髄液の調整を行うと症状の改善が見られることも少なくありません。
オステオパシーは創始者が医師であり、施術で行っていることには医学的側面が多く含まれるため、ひとつひとつ解説しようとすると説明が難しくなってしまうことがありますが、それはオステオパシーの奥深さの裏返しであるとも言えます。その一端でも、このコラムを通じてご理解頂ければ幸いです。
また、最初のお話に戻りますが、頭蓋仙骨療法はあくまでもオステオパシーの一部です。
サザーランド博士自身、実際には頭蓋仙骨以外のオステオパシーにおける治療技術も修得しておりましたし、頭蓋仙骨療法だけを行っていたのではありません。例えば、頭が痛いと言っても、それが何が原因で起こっているのか全身から見つけ出し、治療するのがオステオパシーであって、『私は頭蓋仙骨療法しか学んでいないから、他のところは治せません。』ということでは、それはオステオパシーではありません。実際に、サザーランド博士は時折、オステオパシーを学ぶ生徒から、「先生、頭蓋の治療を教えてください。」と乞われた際に、「それではあなたは、頭蓋以外の治療の全てができる様になっているのか!?」と激怒することがあったそうです。サザーランド博士自身、全身の繋がりを大切に考え、あくまでも全身に対するアプローチがあるオステオパシーの中の、ひとつのコンセプトとして頭蓋仙骨系の概念を世に打ち出したと言えます。
長くなりましたが、ここまで読んでくださる方がおられたなら、ありがとうございます。オステオパシーのことをちゃんと説明するのは、骨が折れます。(笑)
【ちなみに、この記事は、治療家向けに書いておりませんので、クラニオ・セイクラル・バイオダイナミクスに関する詳細な解説は意図しておりません。私自身は、バイオメカニクスとバイオダイナミクスの明確な境界をあまり重要視しておりません。なぜなら、頭蓋におけるメカニクスに働きかけるときも、必ずバイオダイナミックフォースにもアクセスしているでしょうし、機械論的理解と生体動力学的理解とを明確に線引きする必要性をあまり感じていないためです。もちろん、私自身はバイオメカニカルなアプロ―チも、バイオダイナミックなアプローチも両方行いますし、混合している場合もございます。この記事では、ざっくりとクラニオセイクラルセラピーの解説を意図しており、そうした区分はあえてしておりません。話がややこしくなりすぎるので・・・。この発言は、主に治療家向けに書き足した事項です。 】
オステオパシーは元々、外科と産科の医師であったA.T.スティルが創始した手による『自然医学』ですので、 医学的なエビデンス(科学的根拠)が伴った妊婦さんの安産支援、今風に言えばマタニティケアが19世紀から行われておりました。 大まかに言って、産科オステオパシーによるメリットは以下の3つと言えます。
①妊娠中の腰痛、股関節痛などの痛み症状や逆子などのお悩みの改善・解消。
②帝王切開・鉗子分娩・吸引分娩などの医療的介入に至るリスクの軽減。
③赤ちゃんの『出生トラウマ』を軽減することによる発達支援。
基本的に、出産や出生は生まれてくる子にとっては一回限りの待ったなしの経験ですので、お母さんが無事で、赤ちゃんも無事生まれてくれたならそれで御の字だと思います。
しかし、なるべくならスムーズな自然出産によって生まれる方が、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても利点が大きいということは、複数の医師・心理学者・オステオパスなどにより明らかにされています。
特に、胎内環境と出生の状況が赤ちゃんの人格形成に深く影響していることを明らかにした世界的権威として、トマス・バーニー医師という方がおられます。バーニー博士は『胎児は知っている母親のこころ』(日本教文社)という著作などで、医療の現場で日常的に用いられている鉗子分娩、吸引分娩、帝王切開、陣痛誘発剤、無痛法・麻酔法などの医療的介入が、生まれてくる赤ちゃんにどのような影響を及ぼすか、克明に述べています。
一つの例として、鉗子分娩で生まれたケースを引用させて頂きます。
(※鉗子分娩とは『子宮口から金属のへらを組み合わせた大きいピンセットのような器具で赤ちゃんの頭部をはさんで引っ張って出産させる分娩手術』を指します。多くの場合、微弱陣痛などにより子宮口がなかなか開かない時などに用いられます。)
『鉗子分娩にはたいてい麻酔も使われるが、鉗子で挟まれる痛さは、麻酔で抑えきれるものではない。鉗子分娩で生まれ、その後、催眠療法を受けた患者は、出生時に退行すると、この分娩を、痛くて侵略的、暴力的だと表現する。鉗子で引き出された体験は、出生直後の母子のきずなづくりを難しくする。この方法で生まれた人は、スキンシップを嫌い、なでられたり、抱きしめられたりすることに恐怖心を持つ傾向がある。また、ストレスが頭、首、肩の痛みとなって現れる傾向がある。』
トマス・バーニー著『胎児は知っている母親のこころ』より
この様に、出生時の経験が、その後の小児の発達に影響しており、さらには成人になってからも影響を持ち続けているということは、トマス・バーニー医師以外にも多くの証言があり、オステオパスの間でも広く理解されています。
もちろん、お母さんと赤ちゃんが無事であることが第一だと思いますので、医療的介入が最善のケースも当然あるでしょうし、私がそうした医療的介入そのものを否定しているわけではないことは、誤解の無いようお願い致します。
ただ、なるべくならスムーズな自然出産を迎えられる方が母子ともに好ましいと言えるでしょうし、オステオパシーによってそうした医療的介入に至るリスクを事前に減らし、スムーズな出産を支援することが可能であるということは、お伝えする価値があるかと思います。
産科・婦人科・小児科において世界的権威であるフィリップ・ドゥリュエルD.O.は、
「オステオパシーによって、充分に妊娠中の出産に際する身体の問題を解消できた場合、(妊婦さんの)多くは3時間程度のスムーズな自然出産を経験している。」
と述べておりましたが、私自身の臨床においてもそれが事実であることを確かめています。
また、オステオパシー施術を受けていない妊婦さんの統計と比べて、オステオパシー施術を受けていた方に緊急的な帝王切開に至る確率が低いということも特筆すべき点だと思います。ちなみに、当院における臨床でも、多くの妊婦さんを臨月まで施術させて頂きましたが、緊急的な帝王切開、つまりお産が始まったけれども一向に進まずに、母子の安全を考慮して急きょ帝王切開が選択されたケースなどが、開業8年の間に今まで一件もありません。(医師の判断の元、予定的に帝王切開が選択されたケースは当然ございます。例として、第一子が帝王切開で産まれ、第二子も自動的に帝王切開を選択されたケースや、羊水に細菌感染が見つかり母子の安全を考えて帝王切開が選択されたケースなどが挙げられます。また、腰痛などの痛み症状の緩和のために来院され、臨月以前に来院されなくなった方は、出産過程をお聞きする機会がなかったので経過は分かりません。)
もちろん、オステオパシー施術を受ければ必ず自然出産が可能、もしくは安産になると言っている訳ではありませんが、産科オステオパシーはマタニティケアとして非常に有益な選択肢だと、今までの臨床経験とオステオパシーの勉強歴からお伝えすることができます。
妊娠中の腰痛・股関節痛・尾骨痛・頭痛・膝の痛みなどの症状を感じている方、逆子などでお悩みの方、高齢出産や初産で出産に不安を感じている方、なるべくなら自然なお産を経験したい方などは、基礎医学に立脚したマタニティケアを実施しているオステオパシー院をお試し頂くことをお勧め致します。
健和トータルケア:施術者の息子【生後3ヵ月】
ちなみに、私も2児のパパですが、もちろん自分の妻の妊娠中にもオステオパシー施術を十分に行っていました。その甲斐もあり、1人目の子は自然出産にて陣痛がきてから4時間半(初産)、2人目の子は自然出産にて1時間半で生まれています。また、2人ともなるべく自然なお産を目指す助産院で生まれ、生まれてからも母子同室・母乳育児なども意識していました。そうしたことも関連しているのか、生まれて3ヵ月程ですが本当によく笑います。親馬鹿ですいません。(笑)
では実際に、妊婦さんに対してどういう施術をするのかなどはこの記事では控えさせて頂きますが、オステオパシーにおける妊婦さんに対する手技技術は極めて安全性が高く、ソフトな方法であり、また解剖学・生理学などの基礎医学に立脚したものであるということは申し添えておきます。また、オステオパシーは実際に吸引分娩や鉗子分娩などで生まれた小児の頭蓋や脳の緊張を軽減することも得意としております。長くなりましたので今日はこれで・・・。
~~~出生トラウマなどに関する参考文献~~~
トマス・バーニー M.D.(医学博士・精神科医) 著作
胎内環境や出生経験が赤ちゃんの人格形成に関与していることを研究する世界的権威
『胎児は知っている母親のこころ―子どもにトラウマを与えない妊娠期・出産・子育ての科学』
ロバート・C・フルフォード D.O.(ドクター・オブ・オステオパシー) 著作
出生トラウマなどにも触れている伝説的オステオパスの著作
ミシェル・オダン M.D.(医学博士・外科医・産科医) 著作
自然出産や産後の母子同室などの配慮がいかに赤ちゃんの発達や母子の絆に関係しているかを示唆する医師
『お産でいちばん大切なこととは何か: プラスチック時代の出産と愛情ホルモンの未来』
『プライマル・ヘルス』 (残念ながら絶版本・中古のみ)
その他、絶版になってしまいましたが、F・ルボワイエ (産科医)の『暴力無き出産』という著作も、出産過程がいかに赤ちゃんのその後の人格形成に影響を与えるかについて書かれた名著です。
オステオパシーによって頻繁に改善が見られる症状として、顎関節症や顎関節の痛みが挙げられます。この記事では、顎関節にまつわることを解説させて頂きます。少々意外なこととして、このアゴの関節、顎関節は、人体の関節の内一日を通じて最も動く関節と言われています。人間の営みを考えてみれば、何かモノを食べる時にも、喋る時にも絶えず微細な動きをしているのがこの顎関節であると言えます。また、寝ている時に歯を食いしばっていたり、何かしらの強いストレスを感じる時などにも緊張が生まれやすいところでもあります。
顎関節症の主な症状には、
①あごが痛む
②口が大きく開けられない(開口障害)
③あごを動かすと音がする(関節雑音)
④噛み合わせに違和感がある
⑤口を完全に閉じることができない
などがありますが、
オステオパシー的な全身を視野に入れた診方をしていきますと、
顎関節症は必ずしも顎関節だけの問題で起きているのではないということが分かります。
一般的な歯科医療などでは、マウスピースを作ったりということも治療の一環として行われておりますが、それでも改善しない、もしくはマウスピースを付けているのが苦痛という方もオステオパシーを受けに来られることがございますが、オステオパシー施術の際には、必ず全身に対する施術を行っています。実際、全身の繋がりを重視し、頭蓋領域の調整も得意とするオステオパシーによって、顎関節にまつわるお悩みが改善することがございます。
顎関節の不調は、歯のかみ合わせはもちろん、全身のアンバランスや歪みの結果として起きていることが多いのです。
また、心理的要因が関係していることも多いとも言えます。
構造的に考えてみた場合、顎関節は側頭骨の下顎窩という窪みにはまり込み、ぶら下がっているような構造上の特徴があります。この特徴は、言ってみれば頭蓋や頸に不均等な緊張やアンバランスが存在したり、噛み癖が左右非対称だったりしても、段々と不整合が助長されていくという宿命がございます。全身の不整合の結果として、重力的な影響を受けやすいとも言い変えることができます。
また、そうした頭蓋や頸のアンバランスは骨盤や股関節などの重力を支えている構造の歪みの結果として起きていることもあるため、顎関節という局所の痛みであっても、オステオパシーの哲学にもある通り、全身のつながりを視野に施術に当たるべきという経験足がございます。
【プロメテウス解剖学から抜粋】
もちろん、少々専門的な話をすれば、外側翼突筋、内側翼突筋、咬筋、側頭筋などの咀嚼筋と呼ばれる、顎関節と関係の深い筋系の緊張などにも配慮しておりますし、関節円板という、下顎の関節突起(局所的には下顎頭)を受け止めている繊維軟骨の不整合なども非常に重要な要素です。また、舌骨という下顎の後ろぐらいに位置する顎関節と深い関係のある骨に付着する筋や、靭帯の緊張にも配慮しています。
咀嚼筋は、主に側頭骨・蝶形骨・頬骨と下顎骨が関係しておりますが、下顎とそうした他の頭蓋骨とのつながりは、頭蓋内の緊張の連鎖としても関連がございます。特に、側頭骨と関連の深い小脳テントという硬膜系の強固な緊張も顎関節の不調と関与していることがございます。また、この小脳テントは横隔膜や他の隔膜系とも関係があるため、全身的なつながりのなかで顎関節も捉える必要があると私は考えます。
また、顎関節症の発症には、歯科における抜歯などがきっかけとなることもございます。これは歯科領域でもよく言われていることですが、歯の噛み合せの不整合も顎関節に影響を与えることがございます。オステオパシーでは、歯科治療の様な歯の治療自体は当然できませんが、歯槽骨という上顎と下顎の歯を受け止めている部位の固着を改善して、歯の噛み合せの違和感を軽減するということは可能なことがございます。実際に、歯と歯槽骨との間の微細な遊びが失われて、噛み合せの違和感が助長されていくということもございますので。
臨床上、顎関節に対する違和感を感じたのが早期の方は、オステオパシー施術により症状の軽減・消失を経験する方が多いです。
やはり、長年に渡って症状がある方には、関節円板(顎関節を受け止めている繊維軟骨)自体が正常な位置から逸脱してしまっている場合があるため、症状を感じてから5年~10年以上経っているという場合は、完全に改善することが難しいケースもございますので一概には言えませんが、症状を感じ始めて比較的早期であるなら、オステオパシー施術は顎関節症に対して非常に有益な選択肢であると言えると思います。また、長期化しているから改善しないとは簡単に言い難い事例もあるため、他の治療法を様々試したが芳しい改善結果が得られないという方も、オステオパシー施術による全身的な検査と調整を試して頂くのは有意義だと思います。
とりもなおさず、人には常に『個性』があるので全てのケースとは言えませんが、オステオパシーにより、顎関節症の解消にお役に立てることがございます。
今日は多動症、自閉症などの発達が関わる小児施術において、特にお母さんなどのご親族の方に配慮して頂きたいことをコラムにて書かせて頂きます。
『治療事例』、『オステオパシーの適応症』のオステオパシートピックス、以前の『院長コラム』にても、オステオパシー施術によって小児の発達に喜ばしい変化が起きることがあるということを書かせて頂いていますが、そうした発達関連の施術にはご親族の心理的協力が施術が成功するために重要な鍵であると言えます。
なぜかと言いますと、まだ幼いお子様は特にお母さんと心理的にも身体的にも密接なつながりを保っており、お母さん自身の心理状態を色濃く投影しているからです。
こうしたことは、オステオパシーにおける小児施術のエキスパートであるフィリップ・ドゥリュエルD.O.も述べていたことですが、私自身、小児の臨床で日頃深く感じていることなのです。
そこで、小児の発達支援のオステオパシー施術をお子様がお受けになる際に、いくつかお母さんやご親族の方にお願いしたいことがございます。実は、こうしたことが施術が成功するために非常に大切なことなのです。
施術を受けるお子様のお母さんやご親族の方に留意して頂きたい注意点
①お子様の前では、ネガティブな発言をなるべく控えて頂きたいということ。
②施術前には、施術者が遊び半分お子様と接しますが、それも大切なことだと認識して頂きたいこと。
③施術中は、どんな疑問点があったとしても、『本当に変化が起きるんだろうか?』『いったい、何をしているんだろう。こんなことをして意味があるのだろうか?』『うちの子は、ちゃんと施術を受けてくれないだろう。』という疑念をなるべく持たないで頂きたいこと。
④施術中は、施術が成功し、お子様に前向きな変化が起きるよう願って頂きたいこと。
発達に関わる施術が成功するために、実は上記のことが非常に大切な鍵なのです・・・。以下では、各項目ごとに詳細な説明とその理由を書かせて頂きます。
①お子様の前ではネガティブな発言をなるべく控えて頂きたい理由。
例えば、「この子は他の子とも落ち着いて遊べないし、言葉を覚えるのもとても遅いんです。病院では発達障害と診断されて・・・。」などの発言をその子の前でしていますと、その子自身、自分のことを言われているということを意識的にも無意識的にも分かっていることが多々ございます。それにより、ある種の罪悪感の様なものをお子様に植え付けてしまうことも少なくありません。そうしたネガティブな発言をお子様の前ですればするほど、その子にとってネガティブな結果を招きかねないのです。
実際上、体の構造的問題が起因して多動などの挙動が起きているお子様に関して、オステオパシー施術後に行動や言動に変化が起きることがありますが、そうしたオステオパシー施術を行ううえではお母さんの心理状態自体も施術が成功するかどうかに影響を与えているのです。もちろん、お子様のお悩みに関して詳しく問診したいところもあるのですが、それはカルテなどの紙面上で詳しくお聞き致します。また、お子様がいないところでメールや電話などでやり取りすれば、詳しい解説を致します。
しかし、そのお子様の前ではなるべく『障害』であるとかのネガティブな発言を控えて頂きます。実は、これは施術中に限ったことでなく、日常的にそうして頂く方がよろしいかと思います。お母様自身が強く問題思考(その子の問題点ばかりに目が行ってしまうこと。)していることが、お子様が喜ばしい方向に向かうための妨げになることもございますので、こうしたことには留意して頂きたく存じます。
②施術前には、施術者が遊び半分お子様と接しますが、それも大切なことだと認識して頂きたい理由。
特に発達関連の小児のオステオパシー施術を成功させるためには、施術者とお子様の距離感というのが大切になってきます。いきなり施術を始めてその子が恐れを抱いてしまっては施術が成功しないこともあるため、大人の方よりも施術を行うまでに十分な時間を取ることが多いです。お子様がその場の空間に慣れ、施術者に慣れ、一緒に遊んだりすることで段々と施術をさせてくれるということが常です。これは、多動や自閉などの兆候がある子でも施術を受けてくれるようになるために、非常に大切なことなのです。施術を受ける子にとっては、相手がオステオパシー施術家だろうが先生だろうが、全く関係ないのです。(笑)
ですから、まずは人対人のコミュニケーションを取ることから小児の施術は始まります。このプロセスには当然、お母さんを代表とするご親族の方のご協力も必要です。なるべく、施術院に到着するまでにも、「今から良いことをしに行く。」「楽しいところに行く。」というように、施術を受ける子自身がポシティブなイメージを持つよう配慮して頂くと、施術がうまくいくことが多いです。
③施術中は、どんな疑問点があったとしても、『本当に変化が起きるんだろうか?』『いったい、何をしているんだろう。こんなことをして意味があるのだろうか?』『うちの子は、ちゃんと施術を受けてくれないだろう。』という疑念をなるべく持たないで頂きたい理由。
言うまでもなく、子供の心理状態とお母さんの心理状態は非常に強くつながりを持っています。ですから、お母さん自身が施術に対して疑いの目で見ていたり、不安を強く持っていたりすると、その心理状態がお子様に伝染します。お母さんが不安なんですから、お子様が不安な気持ちになるのは当たり前なのです。当院の施術者は発達に関わる小児オステオパシーの専門的な教育を受けておりますので、実際に施術を受ける際には一端は信用して頂き、施術を温かい目で見守ってください。
施術において行ったことなどの詳しい解説は施術後に致しますので、施術中にたびたび質問などをされると施術の流れが途切れたり、お子様がそうしたお母さんの心理状態に呼応して施術がうまくいかないことがございますので、こうしたことも何卒ご理解頂きたいと思います。施術中の施術者は、その子が施術させてくれることを心から願い、施術自体に集中しているため、お母さんやご親族の方にはそうした流れを途切れさせないためにも静かに見守って頂きたく存じます。もし、オステオパシー自体に疑問がある場合は施術日の前にメールなどでその疑問を解消しておく方が良いかもしれません。メールでしたら、詳しくお答えできます。また、ホームページ内でも発達に関わるオステオパシーの小児施術について様々解説しておりますので、どうぞご参考になさって下さい。施術の現場においては、特に多動傾向の強いお子様の施術などは待ったなしの状態になりますので。
また、お母さんもびっくりするぐらい施術を素直に受けてくれることも多くございます。
④施術中は、施術が成功し、お子様に前向きな変化が起きるよう願って頂きたいこと。
これは、上記の③の続きの様なことですが、実は非常に重要なことなのです。当然、施術者よりもお母さんやご親族の方のほうが施術を受ける子と密接な関係がございます。そうした方が、施術者と一緒に施術が成功するよう心のなかで想って頂くこと自体が大きな助けとなります。とりもなおさず、人の身体というのは物理的な領域を飛び越えている側面がございます。また、人の思考というのは実際に『作用』しているということをご理解ください。こうしたことは、昨今、エピジェネティクスという遺伝に関わる分野や量子論などでも分かってきたことで、人の意思自体も、人に実際に『作用』していると言える数々の証拠があるのです。発達に関わる小児施術に関しては、特に、ご親族の方の心理的サポートが施術を成功させるために必要になってきます。これは、私が勝手に言っていることではなく、オステオパシーにおける小児施術では世界共通で認識されていることです。
上記の様な注意点は分かりにくいところもあるかもしれませんが、おそらく実際にお子様が施術を受ける際にその意味を感じて頂けると思います。
実際に、発達に関わる小児施術の臨床においてお母さんにこうしたことを快く承諾して頂いたケースで特に、お子様の行動や言動などに喜ばしい変化が起きていることが多いのです。
もちろん、最初の施術で明らかな変化が起きる子もおれば、何度か回を追うごとに変化が起きる子もおられますので、改善経過にはお子様によって個人差がございますが、オステオパシーが小児の発達に有益なことは毎日の臨床の現場を鑑みてもお伝えできます。しかし、多動や自閉という発達に関わることには非常に多くの要素が関係しておりますので、オステオパシーによってご親族が望むとおりの結果が必ず出ると言っているわけではありません。特に有益と言えるケースは、明らかな出生に関わる問題【出生トラウマ】があるケースであるということも、付言しておきます。
施術を受ける前から、過度な期待をして頂きたくはありませんが、オステオパシーが小児の発達に関するお悩みを軽減するのに有益な選択のひとつであるということは自信を持ってお伝え致します。
また、非常に強い多動傾向などがある子のお母さんが、「本当に施術を受けてくれるのだろうか?」と不安を抱くのも無理からぬことですが、上記のことを守って頂いたケースで特にオステオパシー施術が成功することが多々ございます。必要以上に不安を抱かずに、まずは前向きな姿勢で施術に臨んで頂きたいと思います。
来院されるまでに上記のことを御了承頂き、なるべく初回から有意義な施術をご提供できるよう、コラムにて『発達に関わる小児施術の際の注意点』について説明させて頂きました。
当院の施術者は、オステオパシーを通じてお子様の発達に寄与できることを本当にやりがいのある仕事だと感じています。
何卒、上記のことをご理解頂ければありがたく存じます。
長くなりましたので、今日はこれで・・・。
今日は交通事故などの強い外傷後に発症した『ムチウチ症』などの諸症状について、オステオパシーの基本的な考え方とその有効性について書かせて頂きます。ちょうど、施術者自身が最近交通事故を経験し、やはり、めまいやふらつき、若干の頸の痛みなどを経験しましたが、他のオステオパスの施術を受けることで、早期に事故の影響を減らすことがいかに有益か、改めて身をもって感じました。
少し、想像力を働かせていただくと分かりやすいと思いますが、例えば、追突事故などの後に首の痛みやめまいなどを経験すると、大抵ムチウチ症などの診断を受け、場合により頸の牽引などをクリニックなどで勧められることがありますが、あまり効果が出なかったという方が、当院にも来院されることが多数ございます。
考えてみれば、こうした瞬間的な外傷は、痛むところだけに衝撃が加わったと考えるのは非常にナンセンスです。なぜなら、物理的に考えても、その衝撃は全身に影響を及ぼしており、その結果として首に痛みが出たと考えない限り、根本的な改善は見込めないのです。
そうしたことを理解するうえで、脊柱の中で脊髄を覆う『硬膜』という強靭な膜組織のことを、無視することはできません。この硬膜は、頭蓋内では脳を覆い、背骨の中を通って、最終的には仙骨という骨盤の中心の骨にも付着しています。読んで字のごとく、『硬い膜』と書くだけあって、解剖をするとよく分かるのですが、この硬膜は人体の中でも非常に強靭な膜であり、強く伸び縮みするというよりは、比較的伸縮性に乏しい硬い膜であると言えます。人体はよくできていて、硬膜は大切な脊髄神経を保護し、頭蓋から骨盤までの一連のつながりを保つうえで非常に重要な役割を果たしています。
例えば、追突事故などで思い切り頭を瞬間的に揺すぶられた場合、実は、この硬膜を通じてその張力は骨盤の中心の仙骨にも及んでおり、言ってみれば、衝撃を緩衝するために頭蓋側と骨盤側が著しく引っ張り合うような現象が起きているのです。そして、その衝撃を緩衝する役割を担うのは、全身的な膜の連鎖であると言えます。そうした衝撃が、あまりに人体が許容できる範疇を超えた場合、ムチウチ症の様な慢性化しやすい諸症状を引き起こすのです。ひどい方ですと、数十年前に経験した非常に強い事故の後、ずっと首の痛みやめまい症状などに悩まされている方もおられますが、頚椎などの構造自体が強い障害を負ったケースを除いて、人体が緩衝しきれなかった衝撃による全身的な緊張が解消されないまま月日を送った結果であると言えるのです。
また、首の痛みと同時に、腰痛や頭痛などを訴える方も少なくありませんが、実はそうした諸症状全ては、まさに人体が互いに膜を通じて繋がり合っていることと無関係ではありません。実際は、腰痛と首の痛みが深く関係している場合もよくあるということです。
オステオパシー施術では、あくまで、痛むところや症状のあるところだけに原因を求めるのではなく、どんな症状、どんな悩みでも全身を視野に入れて施術を行いますが、こうした交通事故などの強い外傷というのは、全身的な緊張を読み取り、施術をしないと、根本的な改善が望めないことを多くのオステオパスが解剖学的にも理解しているからこそ、全身を視野に入れて施術を行うのです。強い事故後の症状に悩む方に、オステオパシー施術を受けて初めて症状に改善がみられたという感想を頂くことも多いですが、まさにそれは、全身の緊張の連鎖を読み取り、施術をすることにオステオパシーが長けているからだと言えます。
実際、カイロプラクティックなどのように、部分的な脊椎を瞬間的に矯正する手法だけですとムチウチ症状が緩解しないことが多いのも、それはムチウチ症は部分的な問題ではなく、体全体の緊張の連鎖が本当の原因だからなのです。
また、交通事故後にめまいなどを発症している場合は、頭蓋内の廃液(主に静脈など。)が滞っていることが原因になっている場合があります。静脈は炎症が引くのに非常に大切な役割がありますが、静脈の流れが悪化すると炎症が引きにくくなるという現象は、頭蓋だけでなく、全身に言えることです。特に頭蓋領域で静脈の還流が阻害された場合、のぼせなどを発症したり、ひどい場合は慢性的なめまい症状に発展することも多いです。オステオパシーでは、まずは全身的な緊張を緩解した後に、頭蓋の調整によって廃液を促進することで、速やかにめまい症状が改善することも少なくありません。
健和トータルケアの施術者は、カイロプラクティックも勉強歴がありますが、今現在オステオパシーを中心に据えて学び、実践しているのも、それはオステオパシーの体に対する診方が他の療法よりも遥かに緻密で理にかなっていると過去において確信した結果なのです。カイロプラクティックの様な瞬間的な矯正(主にスラストテクニックなど)が有益なケースも当然ありますが、『全身の膜の緊張の連鎖』という視点をもつことで、雲が晴れる様に様々な強い外傷により発症した症状のメカニズムが見えてきたとお伝えすることができます。
実際に、強いムチウチ症状に悩む方などは、長年、様々な病院や治療法を試したけれども改善せず、本当に意気消沈されている方に出会うこともございますが、そうしたケースでもオステオパシーによりお喜び頂く事例も少なくありません。
その理由は、オステオパシーが、常に全身を視野に入れた自然医学であり、決して部分的な症状に惑わされて、局所に原因を求めることをしないためです。オステオパシーは、ホリスティックな(総体的な)診方をする、非常に医学的な整体であると考えて頂いても間違いではありません。
長年、事故後の症状などに悩む方でも、お力になれることが多々ございますので、諦めずにご相談ください。
私も、自分が事故を経験した後、頭がのぼせたり、首の付け根が痛んだりしていましたが、早速複数のオステオパスの施術を受けさせて頂きました。お蔭で、事故自体はかなりひどいものでしたが、めまい症状や頸の痛みなどに悩まされることも無く、今日に至っています。改めて、身をもってオステオパシーの魅力を感じた次第です。
蛇足ですが、今回事故を経験した時、3歳の子供も後部座席に乗っていました。『私は事故を起こさない。』と自信がある方で、いつも安全運転を心がけている場合でも、一瞬のボタンの掛け違いで、事故を経験することもございます。もちろん、子供はしっかりとチャイルドシートにより保護されていたため、大事には至りませんでした。時折、チャイルドシートをしていない親御さんを見かけますが、絶対にやめてください。また、後部座席に座っていたとしても、シートベルトはした方が良いと思います。
最終的に交通安全キャンペーンの様になりましたが、高速道路などは特に、事故を起せば命に関わりますので、改めてチャイルドシートやシートベルトの大切さを認識致しました。それでも発症してしまった諸症状には、オステオパシー施術は特に有益だと、自信を持ってお伝えすることができます。
【歯の解剖学 金原出版株式会社より抜粋】
今日は、歯に関することをコラムとして書きたいと思います。
オステオパシーでは、体には一切無駄な部分はなく、体の各部位は他の部位と相互に関係しあっており、体全体はひとつのユニットであって、体全体でホリスティック(総体的に)にひとつの生命を営んでいると考えています。
とりもなおさず、普段何気なく歯医者さんで治療されたりしている「歯」に関しても、他の体の部位と密接に関係しあっていることが分かっています。
『歯』というと一見無機質なイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、歯の内側では非常に緻密な生命活動が営まれており、古くから、捕食のために非常に重要な役割を果たしてきた『感覚器』としての側面があります。
想像して頂くと、人間は2足歩行して『手』を使って火をおこしたり、道具を作ったりできるようになった稀有な動物ですが、手を使えていない進化上の時間の方が圧倒的に長いわけです。その時代にどういったところが一番感覚が微細だったかと考えれば、そのひとつは、口腔と歯にあると言えると思います。
そうした痕跡を人間は今も残していると考えられ、人間の脳の発達において、「歯で噛む」という刺激が一役買っていたと考えられます。歯で噛むという刺激は、脳に刺激を与え、それが脳の活性化につながっているということが分かっています。手を使えていない生物だった時には、まさに『噛む』ということが脳の発達や進化に関与していた可能性が高いのです。
余談ですが、歯が全くなくなって噛めなくなった高齢者に認知症が起きやすくなるということが分かっていますし、逆に義歯をつけてでも噛んでものを食べるようにすると、認知症が改善しやすいことも分かっています。
また、歯と歯槽骨という杭とその台座とも言える骨の間は、釘植という形式で結合されていますが、オステオパシー的に見ていくとこれも立派な関節と捉えるべき特徴があり、微妙な遊びがあって、モノを噛む際の圧の調節をしています。そして、そうした圧調整に一役買っているのが『歯根膜』と呼ばれる膜組織なんですね。
オステオパシーではよく筋膜に施術を加えることが多々ございますが、こうした歯根膜などを介して歯に対してアプローチすることも臨床のなかでございます。実際、頭蓋から全身を傾聴してみた時、時折、歯に問題が出てくる方がいらっしゃるのですが、事情を聴いてみますと、何らかの歯科治療の後だったり、ちょうど噛み合せや顎関節に違和感を覚えていたりということが頻繁にございます。
そして、本来であればもう少し『遊び』が必要な部位であるのに、歯の微細な動きが強く制限されている場合、そこから引っ張られるように頭蓋内の他の部位に緊張が連鎖することがあり、また、噛み合せなどの問題は、これは歯科領域でもよく言われることですが、全身の生体力学的なバランスを狂わせる原因ともなります。また、歯の詰め物(構造とは違う観点から言えば、代表的なものはアマルガム)なども、全身に強い影響をだすことがございます。
意外に思われるかもしれませんが、オステオパシーは全身を視野に入れて施術を行いますので、歯に対するアプローチを行うこともございます。
それはもちろん、歯科医の様に、歯の状態そのものをどうこうするということではありません。例えば、明らかにひどい虫歯に侵されているとか、アマルガムなどの詰め物が関係しているのであれば、それは明らかに歯科医師の領域です。そういうこと自体に向けてオステオパシーで改善できると言っているわけではもちろんありません。しかし、歯痛を軽減すること、口呼吸を改善すること、歯の構造的緊張に由来する頭痛や症状を軽減することは可能なことが多々ございます。
歯と歯槽骨との間の固着を改善させたり、そのまま、上顎骨、口蓋骨などの頭蓋内の骨同士の動きを滑らかにするなどして、歯の緊張が全身に及ぼす影響を軽減させることなども行います。
場合により、オステオパシー施術後に歯痛が軽減することもございます。
実は、抜歯や歯科治療を受けた後などは眼に見えない歯に関する異常緊張が認められることが多く、そうした後に頭痛や顎関節痛などの症状を経験している方も少なくありません。
もちろん、歯科医師にも様々な考えの方がおられますので、優れた歯科医師には、全身と歯の関係性を考慮して、歯科医療を行っている方もおられます。
『歯』に関してはまだまだ奥深い話がたくさんありますが、オステオパシーでは、歯は人体の総体と密接に関係した大切な部位であり、全身とつながっていると考えています。
ブログなどでも書きましたが、7月中旬から健和トータルケアの施術者が、 生まれて初めてと言えるほどの体調不良を経験し、それによって臨時の長期休暇を頂きました。
実際には、病院などでははっきりとした病名を言い渡され、 投薬治療をし続けるよう、医師から指導されるような状態に陥りました。 病名は、なかなか明確に書きずらいため【オステオパスとして恥ずかしいことなので・・・。(笑)】、 書かずにおかせて頂きますが、 要するに、肝臓、腎臓、膵臓などの代謝系統に異常が起き、 体内で強い炎症が起きているような状態に陥ったとだけ書いておきます。 (察しの良い人は、何を患ったのか分かる人もいると思いますが。^^)
自分のここ数年間の生活などを顧みた時、オステオパシーという体を使う仕事をしていながら夜の21時まで毎日仕事をし、 休みの日には度々研究会にでかけ、 仕事が終わってからも深夜まで勉強したり、 私はお酒も元々好きなので、研究会の時には先生仲間と飲みに行って夜更かししたり、ほとんど休息という休息を取らずにいました。
また、自分自身も気づかないまま、ストレスや過労が溜まっていたのだなと非常に反省致しました。
私自身、病気を患ってみて心底思ったのは、病気を発症する時には、 生活習慣、過労、ストレスという要因は、必ずと言っていいほど関わっているのではないでしょうか?
まあ私は、食生活については比較的良好だったと思いますが、いかんせん、仕事が終わるのが21時~22時だったので、そこから夕食を取るということ自体、 良い生活習慣とは言えませんね。(それで、20時に閉院とさせて頂いたのですが・・・。^^)
ともあれ、私自身病気になり、最初は落ち込んだりもしましたが、これは「チャンスだ!」とも、思ったんです。
なぜかと言いますと、一般的な病院などでは必ずと言っていいほど投薬治療を勧めるような病気であっても、オステオパシーや食事療法で改善できることを自分自身で証明できるかもしれないと思ったからなんです。(こういうポジティブな発想自体が、病気の回復には一役買っている気もします。^^)
そこで実践したことは、
①他のオステオパスの施術を受けること
②よく休息を取り、身体的・心理的ストレスを軽減すること
③あまり食べないこと
です。
最初の2つは分かりやすいと思いますが、最後の「あまり食べないこと」に関しては、 意外に思われる方もおられるかもしれません。
実を言いますと、こうしたことを実践した背景には、腸内環境をきれいに保ち、 腸内がなるべく空の状態になると、体内でおきた炎症作用が軽減されるということを、 以前から知っていたからです。
皆さんは、「千島学説」という学説をご存知でしょうか?
千島学説というのは、千島喜久男という方が提唱した説なのですが、 詳しくご紹介しますと少々猥雑になるため、その説の核心についてご紹介致しますが、 千島学説の非常にインパクトのあるところとして、
『血液は骨髄ではなく腸で造られている。(腸内造血説)
骨髄で血液が造られることもあるが、それは飢餓状態や大量出血などの異常状態の時のみである。 「血液は骨髄で造られる」という現在の定説は、この異常状態を観察したことが根拠となっている。また、細胞やガン細胞は赤血球が変化したものであり、細胞分裂によって癌細胞がどんどん増えるという説も誤りである。(飢餓状態などになると)癌細胞でさえ赤血球に戻り、また赤血球は白血球や血小板にも変化する。(赤血球可逆分化説)』
ということです。
ちなみに、千島博士は、癌であってもそれは体内で起きた炎症であり、普通の炎症と違うところはそれが慢性的であるということであるとも述べています。そこで、腸内環境をきれいにすることで細胞の逆分化を促進すれば、癌細胞も血球に戻り、癌を始めとする体内の炎症性疾患も自然治癒する可能性があるとも述べています。
定説では、癌のもとは癌細胞であり、癌は局所から発生してそれが猛烈な勢いで分裂増殖していくと考えられているのですから、基本的な癌に対する治療は、その基になる癌の局所(癌組織)をごっそり摘出してしまえばいいという方法が一般的になっているのですが、千島博士は、癌は血液自体が劣化して悪質なものになっている結果であるから、血液を再度きれいにするために腸内環境を改善して、血液の質を改善すれば、癌も自然治癒すると考え、また、その大元の血液の質の改善をしない限り、癌細胞をごっそり摘出したとしても、癌が再発する可能性が否めないという風に考えていたようです。
ご自分で調べて頂ければ、インターネット上などでも千島学説を完全否定しているお医者さんなどもおられますし、こうした千島学説は現代の「血液は骨髄で作られる」という説や、「細胞は細胞分裂によって生じる」という医学界の常識が根底から否定されてしまう為、千島学説を支持している医師や学者なども表立ってそれを表明しないという現状もあります。
私としても、完全に千島学説を信奉しているわけではないのですが、ただ、実際に私は断食や食事療法で病院では投薬治療をし続けるような難治性の病気が治ってしまったという事例を多く知っていたんですね。
例えば、癌、リウマチ、糖尿病、アトピー(他にもたくさんありますが・・・。)が代表的だと思いますが、そうした疾患が治ってしまったという事例を実際に知っていましたし、病院で「余命数ヶ月」と言い渡された癌を患っていた方が、断食や食事療法で完全に治ったという方にも実際に会ったことがあったんです。まあ、その断食や食事療法によって末期がんが治ったという方に関しては、行ったことはそれだけではなく、他の自然療法も併用していたようですが・・・。
私が千島学説に関する書籍を読んでみて思ったことは、 「詳細について間違っているところもあるのかもしれないが、断食などによって難治性の病気が治癒することがあることを、この説なら明確に説明できる。また、体の中で起きていることは、細胞分裂の様に一方向のものではなく、双方向的に全体としてのバランスを取っていると考える方が、直感的にも理にかなっているように思う。」という感想でした。
また、現状では千島学説が様々な社会的な要因もあいまって、その真偽が封殺されているところがありますが、もしこの千島学説が正しいということになったら、生物学の常識や、現代医学の常識が根底から覆されてしまうところが多くあり、通常、癌と言えば、手術、抗がん剤治療、放射線治療を推進している医師からすれば、絶対に認めるわけにはいかない説であるということだけは、確かです。
千島学説が正しいのかどうかはさておき、それでは自分の身体で実験してみたらいいじゃないかと思い、薬を全く取らずに、オステオパシー施術を受け、よく休息を取ってストレスを緩和して、なるべく動物性の食べ物や添加物などが含まれた食べ物を食べずに、食べる量も食べる回数も極端に減らしたんですね。しばらくの間、プチ断食を繰り返しました。食事に関しては、野菜や果物などの植物性のものを中心に食べていました。炭水化物も、量を減らしました。
その結果・・・、その後きつい症状を起こさないまま、今では全く問題なく仕事に復帰できるコンディションまで改善しています。お恥ずかしい話ですが、一時は仕事ができない程の状態でした。
どうも、私としては千島学説が正しいかどうかという以上に、腸内環境をきれいに保ち、なるべく食べないということ自体が、体内における炎症性の疾患に非常に有効であると、身をもって感じています。
また、オステオパシー施術によって体の構造と機能を正常化してもらい、それと食事療法を併用するということが、非常に強力に自然治癒力を引き出す手段であるとも感じました。
正直に言いますと、オステオパシー、不食、酵素などなど、色んなことを試したので、実際に何が本当に一番効いているのか証明することはできませんが、なるべく食べないということ自体が非常に有効であることは、断言できます。(笑)自分で人体実験をし続けた数週間でした。^^
あとは、病気になったときに本当に大切なこととして、「ポジティブ・シンキング」。これに尽きると思います。
闇雲に病気になったことを「悪いこと」と受け取らずに、それは自分にとっての大切な転換点であり、ある意味、今までの生き方について体が見直しを迫っているというサインであり、なるべく、前向きに病気と向き合うということ自体が、とても大切なように思います。
自分が病気になってみて、オステオパスとしても一皮むけたと言いますか、 今後の肥やしになる経験だと思っています。
そのうえで、この歴史的に封殺された千島学説に関しては、再考する価値があるのではないかと、 実体験から改めて感じた次第です。 非常に長くなりましたが、お読み頂き、ありがとうございます。
それでは今回はこれで・・・。
【上で述べている千島学説に関することなどに誤りがある場合もあるかもしれませんが、私はその手の専門家ではないため、詳細に関して万が一間違いがあっても、何卒、大目に見てください。
また、どうもインターネット上にやたらと千島学説について攻撃し、また、それを信じる者は「宗教の信者だ」というような書き込みをする方もおられるようですが、どうもそうした態度自体があまり私は好きではないので、一応、付言しておきますが、私は千島学説の信奉者でもありませんし、非常にニュートラルな態度で参考にしています。
断食などによって宿便をとることがなぜ体にいいか?なるべく食べないことなどがなぜ体にいいかということを明確に説明するのに、非常に面白い説であり、また人の自然治癒力や体全体としてのシステムや調和性について考えた時、非常に理にかなっているのではないか?と直感的に感じているだけです。^^
その真偽については、その手の専門家がチャレンジしていけばいいことだとも、思っています。
≪そもそも、千島学説が本当に正しいかどうかということにチャレンジする気概のある学者さん自体が少ないんですよね・・・。それは、「タブー」に触れることだから・・・。(笑)
参考文献:千島学説入門 地湧社
他、なるべく簡潔にまとめるため、複数のサイトなども参考と致しました。】
自律神経という言葉は日常でよく耳にすると思いますが、この自律神経というのは人体において非常に重要な働きをしており、 何らかの症状や病気には自律神経の乱れが関与していることが多くございます。 自律神経とは、 例えば寝ている間なども心臓は鼓動を続け、 胃腸も働き続けますし、 呼吸も止まることが基本的にはありませんよね?そうした、私たちが意識せずにいても内臓機能などを制御している神経系だと言えます。
自律神経を大まかに分けると、 交感神経と副交感神経という、 言わば、テキパキ動いたり、戦ったりするときに働くべき交感神経と、リラックスしているときによく働く副交感神経という、ある程度あい反する機能を持つ、2つの神経の相互作用によって成り立っています。
最近の自律神経に関する研究でわかってきたこととして、 自律神経のバランスが取れている状態というのは実は、この二つの神経のどちらも、適度に働いている状態と言えるようです。
例えば、一方が働きすぎて、一方の働きが鈍っている場合だと、 免疫機能が落ちたり、何らかの症状を引き起こすことが多くなります。 例えば、交感神経が働き過ぎて、なかなか副交感神経が働かないと、 感染症などにかかりやすくなることが分かっていますし、副交感神経ばかり働いて、交感神経が働いていないと、うつなどのメンタル的な症状を引き起こすことが多いようです。
また、一日を通しても自律神経には日内変動と言えるようなリズムがありまして、 朝から昼にかけては交感神経が良く働き、 夕方から夜にかけては基本的に副交感神経がよく働くようです。
こうした自律神経の日内リズムが狂ってきて、夜になっても副交感神経が働いていないような状態ですと、 不眠などを引き起こす可能性がありますし、 徹夜などをすると副交感神経の働きが低下して、 自律神経のバランスが崩れることも分かっています。
人体にとって非常に重要な制御機能であるこの自律神経ですが、オステオパシー施術で背骨などにアプローチをして、 背骨の狂いを正すと、それと同時に内臓の調子などが改善する例があるのは、この自律神経が非常に深く関係しており、 言わば、自律神経系の通りを改善しているという側面があります。
またオステオパシーでは、 迷走神経(副交感神経の内、非常に大部分を占める重要な神経)や交感神経節などに、 直接アプローチすることで、 自律神経の働きそのものを改善するということも行います。
いずれにしても、人体の健康と不健康を分かつ非常に重要な働きをしている自律神経ですが、ご自分で自律神経系の働きを改善する方法の一つとして、ゆっくりとした運動や呼吸、瞑想などが有効であることが分かっています。
基本的に、自律神経の働きが狂っている場合、 圧倒的に多いのが、副交感神経の働きが落ち込んでいて、 交感神経が過剰になっているケースです。
(たまに逆のケースもありますが、割合としてはこちらのケースの方が多いと思います。)
そうした場合だけに限ったことではないのですが、そうした時に副交感神経を刺激するのに、ゆっくりとしたウォーキングや、ゆっくりと呼吸をすることが有効であるようです。
場合によっては、ヨガや太極拳などもよいかもしれません。 (ヨガに関しては、あるポーズをするために一所懸命になりすぎて、 逆に体を痛めてしまう方がたまにいらっしゃいますが、ヨガの醍醐味は呼吸法や瞑想だと思います。)
それでは、長くなりましたので、今日はこのへんで・・・。^^
今回は、非常に繊細な話を致しますが、これはかねてから私自身も様々な実体験と臨床の現場にても感じてきたことなのですが、人の体の症状や疾患は、純粋な身体的問題で起きている場合もあれば、感情的なトラウマや精神的ストレスなども関与して引き起こしているケースが多くございます。
オステオパシーにおける原則として、人とは、体(BODY)、心(MIND)、精神(SPIRIT)という三つの要素が三位一体となって相互に関係し合いながら生きてると言えます。その三つのバランスが著しく崩れた時、何らかの症状や病変を引き起こすことも少なくありません。
例えば、何らかの自動車事故を経験したとします。その事故による不意の衝撃を緩衝しきれなかった時、体はその衝撃を記憶して、ある意味、体にその衝撃の痕跡を残すことになるのですね。それが後になって、体の機能を乱すことがあり、例えば、ムチウチの様な症状や様々な症状を引き起こすことがあります。
そうした物理的な『構造的異常』が原因で症状が起きているならば、オステオパシーではそうした構造的異常を見つけ出して、それを改善しようと試みるわけです。
しかし、もうふたつの要素である、心理的・感情的トラウマ、精神的・スピリチュアルなトラウマというものも存在し、それが病変の原因となることもあるということですね。
先の自動車事故を例にとると、例えば、肉体レベルでの構造的異常が解消されたとしても、万が一、その人がその事故による『恐怖』を心に刻み込み、それがトラウマになっている場合、その心理的トラウマを治癒に向かわせる必要が場合によってはあるということです・・・。
さらに、万が一その事故によって友人や恋人を亡くしていたならば、 全く違うトラウマ、スピリチュアルなトラウマが痛みや症状に関わっている可能性があるわけです。
もっと言うと、例えば親密だった妻に先立たれた、小さい頃に受けた性的暴行、夫婦喧嘩が絶えなかった親の記憶、親しい友人の自殺など、そうしたトラウマが何らかの病変を引き起こすことも充分、有りうるということです。
オステオパシーでは、そうした心理的トラウマ、精神的トラウマとも言うべきものに向けても改善に向かう様、施術することも試みられてきました。また、実際に快方に向かう例もございます。
そうした実際の臨床例が研究されてくるにつれ、いよいよ、人の体というのは、単なる物質的な肉体以上の何かと言わざる終えない事例が数多くあるんですね。
まあ、こうした話は日本人には非常に親しみのある話かもしれませんが、それが西洋的な実際の科学的な研究の中でも、科学的に認められてきたというところが昨今の興味深いところです。
心(MIND)と精神(SPIRIT)というと微妙に層の違いがありますが、明確な境目があるかと言えば少々難しいことかもしれません。例えば、瞬間的に怒りを感じるような事象が起きた時は心理的領域と言えるかもしれませんし、親の死などによる大きな悲しみはSPIRITレベルで起きるとも言えます。いずれにしても、肉体と心と精神(SPIRITは、霊性・魂とも訳されます。)の三位一体で、相互に関係しながら、人は生きているということは、否定しようのない事実であると思えますし、実は科学的にも実証されつつあるようです。また、オステオパシーのみならず、遠く離れた場所から発祥したチベット医学、ヨガ、ネイティブアメリカンの思想などでも細部に渡る違いはありますが、人という存在をBODY、MIND、SPIRITと捉えていることは非常に興味深いことです。魂と言うと、どうも宗教的なニュアンスに受け取られる危険性もありますが、昨今ではスピリチュアルという言葉は非常に一般的に使われるようになりました。それだけ、そうした意識を持つ人が増えたということの裏返しの様に想います。
また、心理的・感情的トラウマや精神的・スピリチュアルなトラウマが肉体に投影されていることも多々あり、オステオパシーではそうした心理的・精神的トラウマが表現された身体の緊張に向けて施術を行うことで、症状や疾患が快方に向かうということもございます。
ただし、注意しなければいけないのは、こうした心理的トラウマや精神的トラウマにオステオパシーでアプローチすることがあるといっても、おそらくは、トラウマそれ自体を施術者に消すことはできません。それほど、人とは単純な存在ではないと言えます。
あくまで、オステオパスはそうした心理的トラウマ・精神的トラウマが関係する脳の緊張や体に表現された拘縮を改善し、よりその方が良い方向に向かうよう手助けをするというレベルに留まります。なぜ、私がここでこういうことを付言するかと言いますと、人の生命の奥深さを日頃の臨床などで痛いほど感じているからです。
もし、治療家やオステオパスで、人の心理的トラウマ・精神的トラウマを私は治せますという人がいたら、私はその人のことを信用しないでしょう・・・。それは、その治療家の奢りから来るようにも思えますし、オステオパスはまず、人の身体に対峙する時には謙虚さを忘れないことが大切であると、私自身強く感じています。
物議を醸し出しそうな内容のコラムですが、やっとこ、昨今の最先端の研究で、科学的裏打ちがされてきた事実だとも思います。
長くなりましたので、今日はこれで・・・。